管理栄養士の縦と横のつながりによる人間関係構築と仕事及び情報へのアクセスとの関連の検討

「管理栄養士の縦と横のつながりによる人間関係構築と仕事及び情報へのアクセスとの関連の検討」について発表を始めます。

目的です。

現在、管理栄養士は多職種間やチームでの連携が重要視されています。そのため、連携を高めるには人間関係の構築が必要不可欠です。

病院栄養士を対象とした先行研究では職務満足度を高める要因として職場の人間関係が一番に挙げられています。しかし管理栄養士では人間関係に関する先行研究が少ないため、同じ医療系である看護師の研究を参考にしました。

職務継続の理由として職場の話しやすい雰囲気、本人や周囲の学習姿勢を挙げていることから、仕事と人間関係が関連すると考えられます。

また、同僚間で看護の提供に関する相談をしたり、困ったことの相談・助言をすることが報告されているため、人間関係と情報へのアクセスが関連すると考えられます。

人間関係の中には上司、部下などの縦のつながりと、同期・同僚などの横のつながりが存在し、それぞれ関連していることは異なると考えました。

そのため本研究では縦のつながりや横のつながりと仕事、情報へのアクセスの関連を調べることで、管理栄養士の人間関係に関する問題点を抽出することを目的としました。

方法です。

調査期間は9月21日から10月18日の4週間としました。そざい屋さんの利用者を対象に、ホームページに設置したグーグルフォームにて調査しました。

本研究は名古屋学芸大学、研究倫理委員会の承認を得て行いました。

アンケートの調査項目についてです。

年齢、職業、つながり、仕事、情報へのアクセスを調査しました。

つながりに関する調査では上司、部下などの「縦のつながりがない」、同期、同僚などの「横のつながりがない」。仕事に関する調査では「資格を活かしていない」「理想と現実に差を感じている」「収入、時間、休日などの労働環境に不満がある」。情報へのアクセスに関する調査では「常に情報を収集していない」「最新情報を入手していない」「情報が有料で入手できない時がある」「情報収集は主にPCで行う」の計9つの質問を設け、はい、いいえで回答してもらいました。

解析対象についてです。アンケートは合計443件の回答が集まり、そのうち60％を占める管理栄養士269名を本研究の解析対象としました。

全体の結果です。

つながりに関する調査では上司、部下などの縦のつながりがない者は38.7％。同期、同僚などの横のつながりがない者は42％仕事に関する調査では資格を活かしていない者は19％、理想と現実に差を感じている者は63.6％。労働環境に不満がある者は50.2%情報へのアクセスに関する調査では常に情報収集をしていない者が14.9％、最新情報を入手していない者は23.8％、情報が有料で入手できない時がある者は76.6％、情報収集は主にPCで行うものは46.5％という結果でした。

次に上司、部下などの縦のつながりがない者とある者に分けて比較した結果です。年齢に有意差は見られませんでした。

縦のつながりがない者は仕事に関して資格を活かしていない、労働環境に不満があるの2項目で有意に高い結果が得られました。情報へのアクセスについての項目で有意差は見られませんでした。

続いて同期、同僚といった横のつながりがない者とある者に分けて比較した結果です。年齢に有意差は見られませんでした。

横のつながりがない者は常に情報収集をしていない、最新情報を入手していないの2項目で有意に高い結果が得られ、情報収集は主にPCで行うという項目で有意に低い結果が得られました。仕事についての項目で有意差は見られませんでした。

考察です。

まずは調査した管理栄養士269名の現状についてです。

仕事に関する調査では、資格を活かしているものが81％おり、8割のものが資格を活かして活躍していることがわかりました。

また、理想と現実に差を感じているものは63.6％、労働環境に不満を感じているものは50.2％いました。このように５割以上の者が理想と現実に差を感じ、労働環境に不満を持っていることは問題点として挙げられます。

情報へのアクセスに関する調査では、常に情報を収集しているものが85.5％、最新情報を入手しているものが76.2％と約８割のものが情報を入手しようと努めていることが明らかになりました。しかし、情報が有料で入手できないと答えるものも76.6％いることがわかり、これも問題点として挙げられます。

次に、縦のつながりに関する特徴と横のつながりに関する特徴について考察しました。

上司、部下などの縦のつながりがない者の特徴です。

縦のつながりがない者はある者と比べて「資格を活かしていない」で2.3倍、「労働環境に不満がある」では1.3倍と、上司、部下などの縦のつながりは仕事の不満に関連することが考えられます。

同期、同僚などの横のつながりがない者の特徴です。

横のつながりがない者はある者と比べて「常に情報を収集していない」で2.3倍、「最新情報を入手していない」では1.6倍と、同期、同僚などの横のつながりは情報へのアクセスと関連することが考えられます。

最後に年代別で縦のつながりがないもの、横のつながりがない者の特徴について考察しました。

このように年代別で見ると縦のつながりがない者は20代で上司、部下の縦のつながりがないと資格を活かしていない、理想と現実に差を感じているという項目で有意に高い結果が得られています。

このことから特に20代で縦のつながりがないと仕事への不満が強いという問題点が明らかになりました。また、30代、40代では有意差がみられなかったことは理想と現実が近づいた影響によるものか、不満を持っている者が離職した影響によるものかは不明であるため詳細な調査をしていく必要があると思います。

次に横のつながりがない者では、30代で同期、同僚などの横のつながりがないと常に情報収集をしていない、最新情報を入手していないという項目で有意に高い結果が得られました。

このことから特に30代で横のつながりがなく、日頃の情報収集や最新情報を入手していないことは問題であると考えます。その為、特に30代では切磋琢磨しあえる同僚や仲間の存在が重要であるのではないかと思います。

本研究はWeb調査によるバイアスの問題があるため結果の一般化に注意するとともに、今回明らかになった問題点についての詳細な調査や解決策の検討が今後必要だと考えます。

以上で発表を終わります。